弁護士の専門性(交通事故・離婚)
2026/08/30
世の中には、交通事故や相続、離婚、労働問題など多様な法的トラブルが存在します。法的トラブルに巻き込まれた際、どの弁護士に依頼するのが良いのか、全く分からないといったことも多いかと思います。
弁護士を選ぶ基準として、料金体系、アクセス、専門性がよく挙げられます。特に、過去のドラマの影響か、専門分野は何ですか?と聞かれることがあります。
そこで本記事では、ご相談の際に聞かれることが多い交通事故や離婚における専門性をテーマに、一弁護士としての独断と偏見に基づいた意見を記載します。
目次
弁護士の専門・得意分野
弁護士の専門・得意分野
医師の場合、日本専門医機構や学会が「専門医」や「認定医」といった認定を受けますが、弁護士においてはそのような仕組みはありません。
そのため、弁護士の専門や得意分野は、良くも悪くも「自称」になります。なお、特定の分野の事件を多く取り扱っていれば、その分野に精通しますし、特許や税務、建築等、専門知識が必要になる分野もありますので、弁護士にも専門・得意分野があります。
交通事故における専門性
賠償について
交通事故の場合、賠償額に大きく影響を及ぼす項目(金額が多額になる項目)は、①交通事故での受傷に基づく慰謝料、②後遺障害、③過失割合になります。
そこで以下では、上記各項目についてどのように賠償額が決まるのかについて解説します。
交通事故での受傷に基づく慰謝料
自賠責基準・保険会社基準・弁護士(裁判)基準があり、弁護士が介入すれば、弁護士(裁判)基準で算定されることになります。
そして、弁護士(裁判)基準は、参考となる資料が複数あり、資料によって基準が異なります。具体的には、赤本、青本、黄本、緑本と呼ばれる4つの基準ですが、基本的に赤本の基準が採用されることが多いです。
そして、いずれの基準においても、入通院期間で慰謝料額が決まります。
治療が終わった段階で、弁護士に依頼した場合、入通院期間は変わりませんので、弁護士の力量による慰謝料額の差異は生じません。なお、治療が終了する前においては、保険会社や主治医との交渉・折衝により入通院期間が変わってくることがありますので、弁護士の力量による差異は生じますが、弁護士の専門的知識が必要とまでは言えません。
後遺障害に基づく慰謝料・逸失利益
受傷後に治療を受けたものの、残念ながら後遺障害が残ってしまう場合があります。
後遺障害が存在するか否か、存在するとしてどのような後遺障害(等級)かは、損害保険料率算出機構の「自賠責損害調査事務所」という認定機関が決定します。
後遺障害の認定は、事前認定(自賠法15条)と被害者請求(同16条)によってすることができます。後遺障害の認定においては、診断書やカルテの記載、検査結果(レントゲンやMRI)について認定機関は重視します。
診断書や検査の内容に不備や不足があった場合には、弁護士から診断書の修正や追記を医師にお願いしたり、依頼者様に追加での検査や協力医に意見書の作成をお願いすることもあります。また、MRIを撮る時期についても依頼者様にアドバイスをすることがあります。
そのため、弁護士によって後遺障害の認定に差異が生じることはあります。
後遺障害が認定されたのちは、後遺障害による慰謝料や後遺障害による逸失利益が算定されますが、これは金額や算定方法が決まっていますので、弁護士の専門性による差異は生じません。
過失割合
交通事故の過失割合は基本的に、東京地裁の裁判官が執筆した民事交通訴訟における過失相殺率の認定基準〔全訂6版〕別冊判例タイムズ39号に記載されている類型に従って決定されます。
記載されていない類型については、類似の判例を参考に過失割合を決定していくことになります。
そのため、弁護士の専門性による差異は生じ難いといえます。
離婚・男女問題における専門性
離婚や男女問題における争点
離婚や男女トラブルにおいて問題になるのは、①親権、②親子交流(かつての面会交流)、③婚姻費用・養育費、④財産分与、⑤慰謝料になります。
そこで以下では、上記各項目についてどのように賠償額が決まるのかについて解説します。
親権・親子交流
離婚に伴い、父と母のどちらが親権者になるのか、また、非監護者と子どもがどの程度会うことができるのかが争われることがあります。
審判や裁判では、基本的に、子の福祉の観点、すなわち父母のどちらが親権者となるのが子どもにとって望ましいのか、どの程度交流するのが子どもにとって望ましいのかという観点から、調査官の調査を経て決定されます。
その際は、実務上、自らの希望に沿う主張をするほか、「子の監護に関する陳述書」や「親子交流に関する陳述書」を提出することになりますが、記載内容は子どもにとって望ましいという観点から記載することになります。
子どもにとって望ましい環境・状況は、子どもがいる家庭であれば常に考えていることなので、弁護士の専門的な知識はそれほど必要ではないと言えます。
婚姻費用・養育費
婚姻費用や養育費は、基本的に、監護者と非監護者の収入から決められ、おおよその金額は公表されています。
教育費・治療費・住居費・連れ子がいる場合などの特別事情の算定方法についても、書籍(『婚姻費用・養育費の算定』等)が数多く出されておりそれらを読めば相当な金額が算定可能であり、弁護士の専門性は大きく影響しないと言えます。
財産分与
財産分与は、現金、預貯金、不動産、自動車、退職金、株式などのプラスの財産のほか、婚姻生活のための住宅ローンや借金などのマイナス財産も対象とし、夫婦が婚姻期間中に協力して築き上げた財産を、離婚時にそれぞれの貢献度に応じて公平に分け合う制度です。
相手にどの様な財産があるのか全く情報がなければ調べることは困難ですが、金融機関等(●●銀行、●●証券)が分れば調べることは可能であり、給与明細を見れば会社内での積立金・貯蓄の有無を確認することは可能です。
また、基本的には50:50で分け合うため、弁護士の専門性は大きく影響しないと言えます。
財産分与後に税金が生じることがあり、税金までを見越した処理ができるか否かという点で、弁護士の専門的知識の有無により、最終的に取得することができる金額に差異が生じることがあります。
弁護士の基礎的素養
ここまで、独断と偏見に基づき、弁護士の専門性によって生じ得る際について述べてきました。
専門性によって差異は生じないと記載しましたが、あくまで基礎的な能力があることを前提にしています。
依頼者のお話を聞き取り、法的な観点から必要な事実を適切に主張・立証すること、有名な文献や著名な判例・裁判例を知っていること・調べることは、弁護士であれば備えるべき必要最低限の能力になります。これらの能力がなければ、仮に特定の分野における専門的知識があっても、依頼者の利益となる活動は困難だと思われます。
そして、例外はあるものの、備えるべき必要最低限の能力については、司法試験で一定の担保がなされていると思います。


